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クレイグ・テイボーン@The Stone

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クレイグ・テイボーンのソロピアノを観るためにThe Stoneに足を運んだ(2017/9/11)。

以前は1日に別々の2セットだったのに、移転を前にして、1日1セットになってしまっている。20時半スタートだから20時前に行けばいいだろうと思って着いたところ、既に20人くらいが列を作って待っていた。中に入ると、前夜に逢ったヘンリー・グライムス夫妻とお弟子さんがいた。

以前にこのStoneでテイボーンを観るはずだったのが(ピーター・エヴァンス、エヴァン・パーカーとの共演)、なぜか当人のスケジュールに反映されておらず現れなかったことがあった。それもあってとても嬉しい。

Craig Taborn (p)

最初は、7-8秒程度の間隔を開けて単音を弾き、これを4音から7音くらい続ける。次に間隔を1-2秒に短くして、また単音。そのうちに和音を混ぜたり、微妙に和音の発生をずらしたりして、テンションに濃淡をつけてゆく。やがて、響きを長く保つようにしながら、直前の音を再度弾き、音の大きさにコントラストを付けたりする。こうして、緊張から多様さへの展開がある。

やや次への間があって、テイボーンが腰を浮かせ、発想がそこで生まれたかのように、座りながら次の展開がはじまった。それは力強いクラスターの数々であり、その中からブルースが流れ出てきた。アブドゥーラ・イブラヒムを思わせる瞬間もあった。

2曲目はブルースの上にトリッキーな仕掛けがあり、そのサウンドの身の丈が大きくなってゆき、突然断ち切られた。

3曲目はクラシックのような流れるような旋律に、複雑さと機動性が加わっていった。旋律には歓びが入り込んでゆき、和音で構造が組み上げられる。やがてテンションを鎮めるかのように単音に戻った。

4曲目は、装飾音を入れながらも、ひとつひとつの音が絞られて強く美しく、耳を刺した。内部奏法では弦を撫でるような音も発した。そして一音一音の響きが強まってゆき、また力強いベースラインとともに流れていった。

ここで、私の隣に座っていた男が突然ふらふらしたかと思うと、前のめりに頭から崩れ落ちた。テイボーンも演奏をやめた。会場は騒然とした。(終わった後も救急車が外に居て様子を見ていた。)

まずは大丈夫そうだったのでみんな安心した。テイボーンは「ほとんど終わったのだけど」と笑い、それまでの抽象的・構造的なものから一転し、歓びと哀しみとに満ちた旋律を弾いた。力強い盛り上がりのあとに、また旋律が静かに残された。見事だった。

●クレイグ・テイボーン
クレイグ・テイボーン+イクエ・モリ『Highsmith』(2017年)
クレイグ・テイボーン『Daylight Ghosts』(2016年)
チェス・スミス『The Bell』(2015年)
クレイグ・テイボーン『Chants』(2013年)
クリス・ライトキャップ『Epicenter』(2013年)
クリス・ポッター『Imaginary Cities』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
デイヴ・ホランド『Prism』(2012年)
Farmers by Nature『Love and Ghosts』(2011年)
オッキュン・リーのTzadik盤2枚(2005、11年)
ロブ・ブラウン『Crown Trunk Root Funk』(2007年)
アイヴィン・オプスヴィーク『Overseas II』(2004年)
ティム・バーン『Electric and Acoustic Hard Cell Live』(2004年)
ティム・バーン『The Sublime and. Science Fiction Live』(2003年)
ロッテ・アンカー+クレイグ・テイボーン+ジェラルド・クリーヴァー『Triptych』(2003年)


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