1998年にロル・コクスヒルが来日したとき、歌舞伎町のナルシスにサックス・ソロをよくわからず観に行ったのだが、そのときの正直な感想は「なんということもない」。実は、この超脱力・なで肩の魅力は、いきなりのインパクトという形ではなく、じわじわと心を蝕んでくるものなのだった。
そんなわけで、当時録音された『Lol Coxhill + 突然段ボール 2』(Wax Records、1998年)も買い逃してしまっていて、その後、ずっと聴きたかった。ようやく手に入れた。
Eiichi Tsutaki 蔦木栄一 (effectic perc, computer)
Shunji Tsutaki 蔦木俊二 (g, computer, b)
Lol Coxhill (sax, vo)
いや何というべきなのか、ここまで見事に脱力できる人たちについては。コクスヒルのふにゃふにゃとよれていくサックスを聴いていると、全てのこだわりの栓が溶け落ちていくようだ。
ほとんどがスタジオ録音だが、最後の1曲「The Christmas Song」のメドレーだけは吉祥寺MANDA-LA2でのライヴ録音である。解説によれば、その前日、スタジオに蔦木俊二が持ち込んできた音源を聴いたコクスヒルが「The Christmas Songに似ている」と言いだして実現したものらしい。コクスヒル、フィル・ミントン(ヴォイス)、ノエル・アクショテ(ギター)という変態3人トリオによるクリスマス集においてこの曲を変奏しまくったのは前年の1997年。よほどコクスヒルの頭にこびりついていたのかな。
ついでに、『Fred Frith & 突然段ボール』(Wax Records、1981年)。これもやはり脱力系、ノーコメント。フリスは今日、東京駅前の行幸通りで無料ライヴをやるみたいだが、いずれ単独でのライヴを観たいものである。
Fred Frith (g)
Eiichi Tsutaki 蔦木栄一 (organ, ds)
Shunji Tsutaki 蔦木俊二 (g)
●ロル・コクスヒル
ロル・コクスヒルが亡くなった(2012年)
ロル・コクスヒル+ミシェル・ドネダ『Sitting on Your Stairs』(2011年)
ロル・コクスヒル+アレックス・ワード『Old Sights, New Sounds』(2010年)
ロル・コクスヒル、2010年2月、ロンドン
フィル・ミントン+ロル・コクスヒル+ノエル・アクショテ『My Chelsea』(1997年)
コクスヒル/ミントン/アクショテのクリスマス集(1997年)
G.F.フィッツ-ジェラルド+ロル・コクスヒル『The Poppy-Seed Affair』(1981年)
●フレッド・フリス
フレッド・フリス+ジョン・ブッチャー『The Natural Order』(2009年)
高瀬アキ『St. Louis Blues』(2001年)
『Improvised Music New York 1981』(1981年)