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ドリス・レッシング『なんといったって猫』

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ドリス・レッシング『なんといったって猫』(晶文社、原著1967年)を読む。

軽い気持ちで古本屋で手に取ったのだが、中身はそうライトではない。もちろん愛玩される猫がいれば、汚い猫、憎まれる猫、顧みられない猫もいる。著者の幼少時の記憶は、怖ろしいことに、猫の処分(というより、殺戮)に直接結びついている。

それでも著者は猫を飼っている。いや飼っているというよりは同居している。そして可愛がると同時に憎み、対話し、闘っている。特に、話の中心となる灰色猫と黒猫のアイデンティティや生存競争についての仔細な観察を読んでいると、怖ろしくもあり、愉快でもあり、不快でもあり。

ジャック・デリダは、単数形の記号として扱われる<動物>というものの姿を書いてみせたが(『動物を追う、ゆえに私は(動物で)ある』)、ここでのレッシングの心根は、それとはまったく正反対のものだった。


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