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ポール・ボウルズ『孤独の洗礼/無の近傍』

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ポール・ボウルズ『孤独の洗礼/無の近傍』(白水社、原著1957、63、72、81年)を読む。

これはボウルズが中東・北アフリカを旅し、移り住んだときに書かれたエッセイである。スリランカの記録もある。

当時(1950年代)、ボウルズはアメリカで予算を得て、モロッコ音楽の録音収集を行うという仕事を遂行していた。実はそれは簡単なことではなかったことがわかる。目当ての村にたどり着いてみても交流の電気がない。モロッコ政府の許可が得られない。すさまじくひどい宿。民族音楽を近代化の敵のように扱う官僚。ボウルズの活動の成果は『Music of Morocco』という4枚組CD・解説という立派な形となっているのだが、その価値は思った以上に大きなものだった。

サハラ砂漠という孤絶の地について、詩的とも言える文章で綴った「孤独の洗礼」は特に素晴らしい。

「ほかのどんな環境も、絶対的なものの真ん中にいるという最高の満足感を与えてはくれない。どんなに安楽な暮らしと金を失っても、旅行者はどうしてもここに戻ってくる。絶対には値段がないのだから。」

●参照
ポール・ボウルズが採集したモロッコ音楽集『Music of Morocco』
(1959年)


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