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レイモンド・マクモーリン『RayMack』、ジョシュ・エヴァンス『Portrait』

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「ジャッキー・マクリーンの子」たちは、ハード・バップ以降の伝統的なジャズの方法論を受け継いでいながら、決して守旧的ではなく、各々が個性の光を放っている。

そのあたりが気になって、以前に、ジョシュ・エヴァンスをNY・スモールズの外でつかまえて後日インタヴューさせてもらったところ(>> リンク)、かれの口からは、エイブラハム・バートン、マイク・ディルーボ、ルーミー・スパン、ジミー・グリーン、ビル・サクストン、ルネ・マクリーン、レイモンド・マクモーリン、ウェイン・エスコフェリー、クリス・アレン、ロン・サットン、アントワーヌ・ルーニーという名前が出てきたのだった。そのうち日本在住のレイモンド・マクモーリン(地元のバーでよく出会いジャズ話で盛り上がる)にも同じことを訊いてみると(>> リンク)、それぞれの個性を認めて興味深いコメントが得られた。

そんなわけで、レイモンド・マクモーリンの初リーダー作『RayMack』(Truth Evolution Recording Collective、2012年)。

Raymond McMorrin (ts)
Josh Evans (tp)
David Bryant (p)
Dezron Douglas (b)
Curtis Torian (ds)

いや、イイ音である。もちろんジョシュ・エヴァンスは熱い。

先日のマクモーリンのライヴでも、また昨年(2015年)のルイ・ヘイズ(レジェンド!)の来日公演(>> リンク)でも共演したピアニスト、デイヴィッド・ブライアントが実に煌びやかで目が覚めるようなソロを披露している。

曲は最近も演奏しているマクモーリンのオリジナルだが、中でも、「For My Brother Andy」ではエッジの効いたテナーソロを取っていてとてもいい(コルトレーンの「Countdown」を思わせる)。

最近あらためて気づいたのだが、ジョシュ・エヴァンスの初リーダー作『Portrait』(Snave Sounds、2011年)は、その1年前に録音された記録であり、メンバーも割と共通している。そして面白いことに、日本に去るマクモーリンのために、「Ray Mac Left Town」というエヴァンスのオリジナルのワルツを演奏していたりもする。

Josh Evans (tp)
Raymond McMorrin (sax)
Lawrence Clark (sax)
Alan Jay Palmer (p)
Theo Hill (p)
Dezron Douglas (b)
Ralph Peterson (ds)

とはいえサウンドは随分と異なり、こちらは、エヴァンスがその次の作品『Hope and Despair』(2014年)において展開したように、新主流派時代のジャッキー・マクリーンも想起させるような印象。

こうなると一本筋の通ったエヴァンスが好きになるのだが、やはり、マクモーリンの乾いたテナーもいい。モードのように熱く攻めるテオ・ヒルもいい。そして人間扇風機ラルフ・ピーターソンはここでもびしばし叩いて風を起こしている。

いまかれらのジャズを、日本において、どのような人たちが聴いているのだろう。確かに「JTNC」的なスタイルの目新しさはない。フリー・即興によって得られるようなダイレクトな刺激もない。しかし、現在進行形で、伝統に根差した熱いジャズの中で、個性を炸裂させているのは、想像以上に面白い。(それで、わたし自身も「ジャズ」が好きなんだなと思うわけである。)

●レイモンド・マクモーリン
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
レイモンド・マクモーリン@h.s.trash(2015年)

●ジョシュ・エヴァンス
ジョシュ・エヴァンスへのインタヴュー(2015年)
マイク・ディルーボ@Smalls(2015年)
ジョシュ・エヴァンス@Smalls (2015年)
ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)
フランク・レイシー@Smalls(2014年)
フランク・レイシー『Live at Smalls』(2012年)
ラルフ・ピーターソン『Outer Reaches』(2010年)


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