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ミシェル・フーコー『マネの絵画』

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ミシェル・フーコー『マネの絵画』(ちくま学芸文庫、原著2004年)を読む。

ミシェル・フーコーは、1971年にチュニスでこの講演を行った。

マネは言うまでもなく印象派絵画の先駆者だが、歴史的な位置についての言及が中心であり、よりスタイルを特定の方向に進めた面々ほどには評価されていない。だがこのフーコーの視線はとても面白い。それにより、マネの作品そのものが、アートに近代を持ち込んだことを語っていることが理解できる。

観る者を向こう側の世界に連れ込む前提が疑われ、キャンバスというタブローの存在が、描かれる世界にも口出しをはじめたこと(それはキャンバスや絵具のマチエールとは異なる)。すなわち、絵画自体が、それを観る者の存在を取り込みはじめたこと。絵画の中の光さえもそのことにより屈折し乱反射しさまよいはじめたこと。

一方的な世界の供与という権力装置から、絵画を観るあなたは何者かと問いかけ、観る者もそれに応えざるを得ない装置へと転じたわけである。だからこそマネの作品がスキャンダルになったのだし、またフーコーがマネを重視したのだということがよくわかる。

●ミシェル・フーコー
ミシェル・フーコー『性の歴史Ⅰ 知への意志』(1979年)
ミシェル・フーコー『監獄の誕生』(1975年)
ミシェル・フーコー『ピエール・リヴィエール』(1973年)
ミシェル・フーコー『言説の領界』(1971年)
ミシェル・フーコー『わたしは花火師です』(1970年代)
ミシェル・フーコー『知の考古学』(1969年)
ミシェル・フーコー『狂気の歴史』(1961年)
ミシェル・フーコー『コレクション4 権力・監禁』
重田園江『ミシェル・フーコー』
桜井哲夫『フーコー 知と権力』
ジル・ドゥルーズ『フーコー』
ルネ・アリオ『私、ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した』
二コラ・フィリベール『かつて、ノルマンディーで』
ハミッド・ダバシ『ポスト・オリエンタリズム』
フランソワ・キュセ『How the World Swung to the Right』


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