シヤ・マクゼニ『Out of This World』(2016年)を聴く。
Siya Makuzeni (vo, tb, Pedals / Loops)
Ayanda Sikade (ds)
Benjamin Jephta (b)
Thandi Ntuli (p, key)
Sakhile Simani (tp, flh)
Sisonke Xonti (ts)
feat. Justin Faulkner (ds) on track 6
『ラティーナ』誌2018年6月号の南アフリカジャズ特集に紹介されているディスク。
シヤ・マクゼニは歌い、トロンボーンを吹く。声は少しハスキーで、ぬめりのような独特さがある。サウンドは作曲によるところもあるのか、沈んでいながらも上下左右に飛び出るようなノリがあり、想定外で驚いてしまった。ここにはベンジャミン・ジェフタの躍るベースも貢献している。その中でマクゼニの声がルーパーによってそのあたりをたゆたい、まるで多くの者がざわついているようにさえ聴こえ、ちょっと動悸がする。
もうひとつ特筆すべきはタンディ・ンツリのピアノとキーボードであり、流麗にスウェイして、どうしても耳に飛び込んでくる。
5曲目の「Through the Years」は、なんと、ベキ・ムセレク『Timelessness』(1993年)の収録曲である。当時は日本でも評価されたムセレクだが、やがて日本盤も出なくなり、亡くなっても話題にもならなかった(わたしは翌年になって気が付いた)。『Beauty of Sunrise』(1995年)はいまも傑作だと思っている。ムセレクが母国でこのように大事にされているのだと思うと嬉しい。