神楽坂のクラシコ書店に足を運ぶといつも閉まっていて、先日、ようやく入ることができた。想像通りステキな古書店で、ほどよく整理されている。しばらく悩んで、2冊をわがものにした。そのうちの1冊、滝田ゆう『下駄の向くまま 新東京百景』(講談社、1978年)。
東京の盛り場や渋い町を散歩し、そのまま飲むだけのエッセイである。だけ、なのだが、もちろん面白いのだ。自由になったらいくつか健在の飲み屋に行こう。どじょうは別に食べなくてもよいのだけれど。
やはり、滝田ゆうの絵を味わうには単行本くらいでないと物足りない。たとえば、合羽橋商店街の奥行きの表現力といったら素晴らしいものだ。今回じろじろと観察していて、意外に建物の線がよれておらず真っすぐだということを発見した。よれるのはマチエールであり気持ちなのである。
ところでもうひとつ発見。旧赤線の洲崎パラダイスの入り口あたりに洲崎橋があったわけだが、いままで、あのへんだろうと漠然としか思っていなかった。実はよく行くインド料理店のカマルプールのすぐ向こう側だということがわかった。なお橋が架けられた川は、滝田ゆうが訪れたときには水が流れず草ぼうぼうであり、いまは緑道になっている。
●滝田ゆう
滝田ゆう展@弥生美術館