東中野のセロニアス(2017/1/7)。注目の面々なので予約までして駆けつけた。永武幹子さんはインフルエンザが治ったばかりで今年はじめての演奏とのこと。
Mikiko Nagatake 永武幹子 (p)
Ippei Kato 加藤一平 (g)
Takashi Seo 瀬尾高志 (b)
Raiga Hayashi 林ライガ (ds)
インプロ的なはじまりから、「After All」(ビリー・ストレイホーン)。「Stardust」を思わせもするがこれもストレイホーンだった。林さんは最初はマレットを使うがやがてスティックに持ち替え、いきなりフルスロットル。柔軟というよりも硬くばしばしと押すドラミングである。ギターがエロチックでもサイケデリックでもあり、瀬尾さんのベースは重い。林さんのぎらぎらとしたアイコンタクトがこちらにも伝わってくる。
次に「Brilliant Corners」(セロニアス・モンク)。モンクは自分自身の演奏時には、スピードを厳格に決めていたという。つまりこのゆったりとしたメロディの流れ方もモンク固有のものであって、それがマジックとなって演奏にも影響する。崩壊してはふたたび走りはじめる、その繰り返し。瀬尾さんのベースには重く跳躍する感覚があり、ここに加藤さんのギターがジョーヘンを思わせるホーンライクな介入をみせた。
「ベオ・カリーニョ」(古澤良治郎)。ピアノの美しいイントロにベースが伴い、やがてその立場を逆転させる。ここでのドラムスのパルスもとても重い。ピアノトリオを中心とした時間のあと、加藤さんのギターが、太い地声で艶歌でもうたうように入ってきて演奏を牽引した。腰も浮かせてエクスタシー感あふれるソロだった。それにしてもこの重量級メンバーのなかで、永武さんのピアノは知的に浮かび遊んでいるように聴こえる。
セカンドセットもまたインプロ的にはじまった。ピアノの模索、ベースとギターの呼応。林さんは背後で嬉しそうに次の展開を考えている模様。そして全員がエネルギー強度の高い領域で、たいへんにカオティックながら秩序もつど創出されるような素晴らしい演奏をみせた。演奏は瀬尾さんのアルコにより収斂しつつ、次の曲へ。林さんのマレットからブラシへの転換が見事にみえる。また瀬尾さんのベースは全体を包み込むような広がりがある。
そして「We See」のあと、アンコールが「The Lord Is Listenin' To Ya, Hallelujah」(カーラ・ブレイ)。「自由な気持ちで」と示し合わせた通り、おのおのの音を発展させる面白さがあった。林さんのドラミングには、この曲に限っては、森山威男の得意技が重なってみえたがどうだろう。
Fuji X-E2、XF60mmF2.4
●永武幹子
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
酒井俊+永武幹子+柵木雄斗(律動画面)@神保町試聴室(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年)
MAGATAMA@本八幡cooljojo(2017年)
植松孝夫+永武幹子@北千住Birdland(JazzTokyo)(2017年)
永武幹子トリオ@本八幡cooljojo(2017年)
●加藤一平
竹内直+加藤一平@セロニアス(2017年)
鈴木勲セッション@新宿ピットイン(2014年)
永武幹子+瀬尾高志+竹村一哲@高田馬場Gate One(2017年)
永武幹子+瀬尾高志+柵木雄斗@高田馬場Gate One(2017年) 森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
板橋文夫『みるくゆ』(2015年)
ジャスト・オフ『The House of Wasps』(-2015年)
寺田町+板橋文夫+瀬尾高志『Dum Spiro Spero』(2014年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年) ●林ライガ
林ライガ vs. のなか悟空@なってるハウス(2017年)
森順治+高橋佑成+瀬尾高志+林ライガ@下北沢APOLLO(2016年)